米中関税緩和でドル円が急騰、リスクオンムードが市場を支配

米中関係改善が市場心理を好転させた背景

2025年5月12日、米国と中国はスイス・ジュネーブでの協議を経て、相互関税を大幅に引き下げる90日間の合意に達しました。具体的には、米国が中国製品への関税を145%から30%に、中国が米国製品への関税を125%から10%に引き下げる内容です。この合意は、長引く貿易戦争の緩和として市場に歓迎され、投資家のリスク選好を高めました。その結果、株式市場は上昇し、安全資産とされる円は売られ、ドル円は一時148.65円まで上昇しました。また、米連邦準備制度理事会（FRB）が利下げを見送る姿勢を示したことも、ドルの支援材料となりました。

市場の動向：ドル円の上昇と円の弱含み

ドル円は、米中貿易合意とFRBのタカ派的なスタンスを背景に、5月12日に約2.15%上昇し、148.65円まで達しました。これは、2025年4月以来の高値水準です。リスクオンの流れが強まり、円は安全資産としての需要が低下し、主要通貨に対しても弱含みました。例えば、ポンド円は195.31円まで上昇しました。一方、ドルは主要通貨に対して広く上昇し、ドル指数は1.1%上昇しました。このように、ドル円の上昇は、米中貿易合意とFRBの政策スタンスによるリスクオンムードの高まりが主因と考えられます。

今後の展望：ドル円の動向と注目ポイント

短期的には、ドル円は150円を目指す展開が予想されます。市場では、5月の米消費者物価指数（CPI）や小売売上高などの経済指標が注目されており、これらの結果がドルの方向性を左右する可能性があります。また、FRBの政策スタンスや米中貿易協議の進展も、ドル円の動向に影響を与えるでしょう。一方、中長期的には、米国の景気減速やFRBの利下げ転換、または日本銀行の政策変更などがあれば、ドル円は下落に転じる可能性もあります。市場では、年末にかけてドル円が110〜120円台まで下落するとの予想もあります。したがって、今後のドル円の動向は、経済指標や中央銀行の政策、地政学的リスクなど、複数の要因に左右されると考えられます。