2025年7月29日 世界経済の現状と日米株式市場の展望

今回の出来事への考察：米国の市場牽引力と各地域の思惑が交錯

現在の世界経済は、米国の強さが際立っています。S&P500やナスダック100の史上最高値更新は、ハイテク企業の高い成長性や、AI関連需要の拡大が背景にあります。特に、エヌビディアをはじめとする一部の「マグニフィセント7」と呼ばれる銘柄群が市場全体を押し上げる構図が続いています。米国の関税政策は不確実性をはらむものの、EUとの関税交渉合意や中国との関税停止措置の延長期待が、市場に一定の安心感をもたらしている側面もあります。一方、日本株の軟調な動きは、日米の金融政策の方向性の違いが大きく影響しています。米国がインフレ抑制のため高金利を維持する可能性が高い中で、日本は依然として緩和的な金融政策を維持しており、これが円安を進行させ、日本企業の業績にはプラスに働くものの、海外投資家にとっては相対的な魅力が低下する要因にもなり得ます。欧州は、財政出動による景気回復への期待があるものの、米国発の貿易摩擦の行方には警戒感を抱いている状況です。

市場の動向：ハイテク株に牽引される米国市場と円安下での日本株の複雑な動き

米国株式市場は、S&P500が連日最高値を更新し、特にハイテク株のパフォーマンスが目立ちます。背景には、人工知能（AI）関連の需要拡大や、企業の堅調な決算発表があります。エヌビディアの時価総額4兆ドル突破はその象徴と言えるでしょう。今週はアップルやアマゾンといった主要銘柄の決算発表が予定されており、市場の関心を集めています。債券市場では、米国の長期金利が上昇傾向にあり、これがドル高を支援しています。為替市場ではドル高・円安が進行し、ドル円は一時148円台後半まで上昇しました。これは、米連邦準備制度理事会（FRB）の利下げ観測が後退し、日米金利差が意識されているためです。日本株市場では、日経平均株価が利益確定売りや円安進行の影響で4万998円と続落し、高値警戒感から調整局面を迎えています。しかし、対米巨額投資の動きが報じられる中、機械・設備投資関連株など一部のセクターでは期待感が高まっています。

今後の展望：金融政策と貿易政策が世界経済と株式市場の行方を左右する

今後の世界経済および株式市場の見通しは、主に米国の金融政策と貿易政策の動向に大きく左右されます。米連邦公開市場委員会（FOMC）は今週開催され、市場は政策金利の据え置きを予想していますが、インフレの高止まりや堅調な経済指標が続けば、利下げ開始時期が後ずれする可能性があり、その場合はドル高・円安基調が続くことが予想されます。日本の金融政策も引き続き注目されますが、早期の大きな政策転換は想定しにくいでしょう。米国株に関しては、ハイテク企業の決算内容やガイダンスが今後の株価を大きく左右するでしょう。特にAI分野の成長が持続するかが焦点となります。日本株は、円安が輸出企業に追い風となる一方で、輸入物価上昇による国内経済への影響も懸念されます。また、米国の関税政策が世界経済に与える影響は依然として不透明であり、米中間の通商協議の行方も注視する必要があるでしょう。2024年11月の米大統領選挙の結果も、今後の貿易政策や世界経済の方向性を決定づける重要な要素となるため、その動向から目が離せません。