2025年7月16日 金相場、米CPIと貿易摩擦懸念で方向感定まらず

金融政策と地政学リスクの狭間で揺れる金市場

今回の金相場の動きを考察すると、マクロ経済の主要なテーマである**インフレ動向**と**地政学リスク**が複雑に絡み合い、市場の方向感を定めるのが難しい状況が浮き彫りになります。米国のCPIが予想通りの範囲に収まったことは、連邦準備制度が急激な金融引き締めをさらに進める可能性を低下させ、これは金にとってプラスに作用するはずです。なぜなら、金利上昇は金を保有する機会費用を高めるからです。しかし、同時に米国が新たな貿易関税を課す可能性は、世界経済の成長鈍化やサプライチェーンの混乱を招き、不確実性を増大させます。このようなリスクが高まる局面では、安全資産としての金の需要が高まるのが一般的です。つまり、金利の抑制圧力が金相場を下支えしつつも、貿易摩擦がリスクオフのムードを醸成し、双方向からの力が金価格に影響を与えている状態と言えます。

主要経済指標と安全資産への思惑

昨日の金市場は、米国の主要経済指標と安全資産への思惑が綱引きする形で動きました。CPIの発表は市場に一定の安心感をもたらしましたが、同時に米国の長期金利が堅調に推移したことで、金に対する相対的な魅力は限定的でした。通常、金利上昇は金にはマイナスに働きます。しかし、米国の貿易政策を巡る不透明感は、株式市場のボラティリティを高め、投資家がリスク回避のために金に資金を振り向ける動きを誘発する可能性がありました。結果として、これらの要因が互いに相殺し合う形となり、金価格は大きく動くことなく推移しました。ドルも堅調に推移したため、ドル建ての金はドル高によって買われにくくなるという側面も影響しました。

今後の展望：中央銀行の姿勢と地政学リスクの行方

今後の金相場の展望としては、まず**連邦準備制度の金融政策スタンス**が最も重要な決定要因となるでしょう。今回のCPIの結果を受けて、連邦準備制度が利上げサイクルを終了し、将来的な利下げに転じるタイミングがいつになるのか、市場はより明確なヒントを求めます。利下げ観測が強まれば、金にとっての追い風となります。次に、**地政学リスクと貿易摩擦の行方**も金価格を大きく左右します。米国と主要貿易相手国との間で関税問題が激化すれば、世界経済の不透明感が高まり、安全資産としての金の需要が一段と高まる可能性があります。逆に、交渉によって問題が解決に向かえば、リスクオンの動きが強まり、金から資金が流出するかもしれません。また、主要な中央銀行による金の買い増し動向も注視すべきです。特に、新興国の中央銀行によるポートフォリオ多様化のための金購入は、構造的な金需要を支える要因となり得ます。投資家は、これらの複合的な要因を注意深く見極める必要があります。