2025年8月17日：米利下げ観測の高まりで金価格が急伸、リスクオフとインフレヘッジの思惑が交錯

利下げ期待と金価格の連動性

今回の消費者物価指数（CPI）の発表は、FRBが利下げに踏み切るための重要な根拠となり得るものでした。金融引き締め局面においては、米国債などの安全資産の利回りが上昇するため、利子を生まない金は投資家にとって魅力が薄れます。しかし、利下げ観測が強まるとこの構図が逆転し、金の相対的な魅力が高まります。今回の市場の反応は、この論理を明確に示しています。金価格は利下げ期待から米ドル安が進行する中、ドル建ての金を購入するコストが低下したことも追い風となり、急伸しました。

市場における金の二面性

金は伝統的に「安全資産」と「インフレヘッジ」という二つの側面を持っています。経済の不透明感や地政学的なリスクが高まる局面では、リスクオフの流れで買われやすい傾向があります。一方で、インフレが進行する局面では、通貨の価値が目減りすることへの備えとして、実物資産である金が買われることもあります。今回の金価格の上昇は、利下げ期待による米ドル安と、依然として根強く残るインフレへの警戒感が交錯した結果と言えます。市場参加者は、経済指標の軟化を好材料と捉えつつも、将来の不確実性に対する備えを同時に行っている状況がうかがえます。

今後の金価格の行方

今後、金価格は引き続き米国の金融政策の動向に大きく左右されるでしょう。もしFRBが早期の利下げに踏み切る可能性がさらに高まれば、金価格は一段と上昇する可能性があります。特に、インフレ率が緩やかに下がり続ける中で、実質金利がマイナス圏で推移するような状況になれば、金への投資妙味はさらに高まります。しかし、インフレが再び加速する兆候が見られた場合や、FRBが利下げに慎重な姿勢を崩さない場合、金利上昇への思惑から金価格は下落に転じる可能性があります。当面は、今後の米国の経済指標（特に雇用統計や他の物価指数）を注視し、FRBの姿勢を慎重に見極める必要があります。