2025年7月10日 金相場、世界経済の不透明感と低金利期待で底堅い推移

不確実性の中での金の役割再評価

昨日の金相場の推移は、現在の世界経済が直面する不確実性、特に貿易政策を巡る緊張感の中で、金が依然として重要な安全資産としての役割を担っていることを示しています。米国の長期金利の低下は、実質金利の低下を意味し、これは通常、金価格にとって支援材料となります。利回りの低下は、債券投資の魅力を相対的に低下させ、投資家がインフレヘッジや価値の貯蔵手段として金を再評価するきっかけとなります。グローバルな貿易摩擦が解消に向かう兆しが見えない限り、投資家のリスク回避姿勢は続き、金への安定した需要が見込まれます。

安全資産としての需要が市場を牽引

金市場の動向は、主に安全資産としての需要に支えられました。世界経済の成長に対する懸念や、特定の地域の地政学的な緊張感が継続していることが、投資家をリスクの高い資産から比較的安全な資産へと向かわせる要因となっています。米ドルのわずかな上昇にもかかわらず、金価格が堅調に推移したことは、ドル高による金価格への通常の下押し圧力を、安全資産としての需要が上回ったことを示しています。これは、市場が単一の要因だけでなく、複数の複合的なリスク要因を考慮に入れていることを示唆しています。

金融政策と地政学リスクが織りなす金相場の今後

今後の金相場は、引き続き世界経済の不透明性、特に貿易政策の進展と主要中央銀行の金融政策の動向に大きく左右されると予想されます。米連邦準備制度理事会（FRB）が利下げに踏み切る可能性や、利上げペースが鈍化する見通しが強まれば、金価格には上昇圧力がかかるでしょう。これは、低金利環境が金保有の機会費用を低減させ、投資魅力を高めるためです。

また、米ドルの動向も金相場に大きな影響を与えるでしょう。ドルが大幅に上昇すれば金価格の上値を抑える可能性がありますが、ドル安に転じる場合は金が大きく上昇する余地が生まれます。加えて、インフレ期待の動向も金の重要な支援材料となり得ます。長期的に見て、地政学的なリスクや経済成長の不確実性が続く限り、金はポートフォリオにおける重要なヘッジとしての役割を果たすと見られており、特定の価格帯での安定した推移が継続すれば、さらなる上値を目指す展開も期待されます。